法人契約の生命保険とは
法人(会社)が契約者、従業員や役員が被保険者となる生命保険のことをいいます。経営者の死亡リスク対策、退職金準備や福利厚生などに活用されます。個人の保険とは違い、保険料の支払時と保険金等の受取時には会社の経理処理が必要となります。
生命保険料の経理処理
法人が支払った生命保険料は、損金と資産に分けて経理処理をします。まずは基礎知識として、この違いを知っておきましょう。
損金⇒税務上の用語。法人の費用や損失のこと。貯蓄性のないもの。
資産⇒貯蓄性のあるもの。
※法人が受取人の場合、大きくは上の2つに分けられます。
Step① 法人が支払った生命保険料の経理処理の流れ

- 損金にできる→損金算入する
- 損金にできない→資産計上する
- 損金にできるものとできないものの混在するとき→損金算入と資産計上する
例:法人が保険金受取人の場合
- 貯蓄性のない掛け捨ての保険・定期保険など→損金算入(お金が貯まらないもの)
- 貯蓄性のある保険・終身保険や養老保険など→資産計上(帳簿にお金が貯まるもの)
※支払った保険料の経理処理によって受け取る保険金の経理処理が変わることに注目!
Step② 法人が受け取った生命保険金などの経理処理の流れ

保険料支払時 受取時の経理処理
- 資産計上額がない⇒全額雑収入
- 資産計上額がある⇒資産計上額<保険金→差額が雑収入
- ⇒資産計上額>保険金→差額が雑損失
法人が支払った生命保険料の原則的な経理処理
- 帳簿ある保険商品の場合⇒資産計上。法人が受取人の終身保険、養老保険など貯蓄性のある商品の保険料は『保険料積立金』『前払保険料』などの科目で、資産に計上します。
- 掛け捨て保険商品の場合⇒損金算入。法人が受取人の定期保険、特約保険料など掛け捨ての商品の保険料は『定期保険』『特約保険料』『福利厚生費』などの科目で損金に算入します。
- 保険金受取人が法人以外⇒損金算入。保険金受取人が法人ではなく、特定の被保険者や遺族になっている場合、『給与』として扱い、原則、損金に算入します。
養老保険の経理処理
養老保険の保険料は、資産計上が基本的な経理処理ですが、「契約社=法人、被保険者=(役員)・従業員の全員」とすると養老保険は、受取人の要件を満たした場合(下図)保険料の2分の1を損益算入(福利厚生費)にすることが出来ます。これをハーフタックスプラン(福利厚生プラン)といいます役員・従業員の死亡退職金や生存退職金として活用できます。


- ※ハーフタックスプラン(福利厚生プラン)は、全員加入が原則です(普遍的加入)
- ハーフタックスプランは死亡保険受取人が被保険者の遺族、満期保険金受取人が法人です
※特定の役員・従業員のみを被保険者としている場合は、「福利厚生費」ではなく「給与」になります
※ハーフタックスプランの意味は⇒ハーフ(半分)タックス(税金)ってことですね。
養老保険の保険料の仕訳例
例として、A社が養老保険の年間保険料100万円を現金で支払ったとします。(ハーフタックスプランの要件は満たしていることとします)

- ハーフタックスプランなので半分は損金算入できます。
- (損金計上)50万円、福利厚生費として半分を損金算入(借方)
- (資産計上)50万円、保険料積立金として半分を資産計上(借方)
- (資産の減少)100万円現金・預金の支払で資産の減少(貸方)
- 仕訳では借方と貸方必ず同額になります。
※参考 簡単な仕訳のルール
①借方に記帳される取引
- 資産の増加
- 負債の減少
- 純資産の減少
- 費用の発生
②貸方に記帳される取引
- 資産の減少
- 負債の増加
- 純資産の増加
- 収益の発生
受取人を法人とする定期保険等 の経理処理
2019年7月8日以後に契約した定期保険及び第三分野の保険の経理処理は、最高解約返戻率で異なります。最高解約返戻率とは保険期間中、支払った保険料に対する解約返戻金相当額の割合が最も高い時をいいます。

※最高解約返戻率が50%超70%以下で1被保険者あたりの年換算保険料相当額が30万円以下となる契約は全額損金算入となります
※簡単に言うと解約返戻率が高い定期保険は解約を前提とした節税目的のものが多かったため、それはダメという通達がきたということです。
2019年7月7日以前に契約した長期平準定期保険の経理処理は保険期間の前半6割と後半4割の期間で経理処理が異なります。
長期平準定期保険とは・・保険期間満了時における被保険者の年齢が70歳超で、かつ、保険に加入した時の年齢に保険期間の2倍相当数を加えた数が105を超える定期保険です

保険期間の前半6割の期間
- 支払保険料×1/2=前払保険料(資産計上)
- 支払保険料×1/2=定期保険料(損金算入)
保険期間の後半4割の期間
- 支払保険料の全額が定期保険料(損金算入)
- 資産計上されている保険料を均等に取り崩して損金算入
法人保険からの保険金等受取り等の経理処理
法人保険からの生命保険金等の受取は、それまで資産計上していた保険料積立金等との関係により雑損失と雑収入の経理処理があります
死亡保険金・解約返戻金・満期返戻金の受取り
法人が保険金等(死亡保険金・満期保険金・解約返戻金)を受け取った場合、それまで資産計上していた保険料積立金があれば保険金等から差し引き、その差がプラス(保険金が多い)場合は差額を雑収入、逆にマイナス(保険金等が少ない)の場合は差額を雑損失として経理処理します。
役員勇退時の名義変更(終身保険)
役員勇退時に役員退職金の一部または全部として法人契約の終身保険の契約者名義を当該役員に変更し、死亡保険金受取人を役員の相続人等に変更して、役員個人の終身保険契約として継続することができます。その際の経理処理は、原則、解約返戻金相当額が当該役員の退職所得の収入金額となります。
法人保険の受取りのまとめ
- (受け取った保険金等が)超過したら雑収入
- 不足だったら雑損失
- 受け取った保険金等がプラスなら雑収入に。
- マイナスなら雑損失に経理処理
- 役員勇退時、終身保険の名義変更をして退職金の一部として継続させて当該役員の退職所得の収入として経理処理